以前、友人と会話していて、「欲」を持つことの是非についての話になったことがある。
彼女は欲を持つのは良いことだという意見で、その理由は、欲は「もっとよくなりたい」という向上心、モチベーションに繋がるから、ということだった。
私も以前はそういう風に考えていた気がするが、最近では「欲は百害あって一利なし」と思うようになっている。
なぜなら「欲がある」というのは、「満たされていない」ことの裏返しだから。
私たちには「今」しかない。
過去も未来も幻で、今、この瞬間だけが真実だ。
だとすれば、今、この瞬間を満たされた気持ちで生きていたいと思うのである 。
私は別に金持ちでも美人でも天才でもないが、ありがたいことに食べるのに困らないだけの収入はある。夫も恋人もいないが大切に思う人はいて、それなりに打ち込める仕事も持っている。
家族はそれぞれに問題を抱えつつも、まぁ、元気でやっていると言える。
収入があと100万増えれば生活はもっと楽になるかもしれないし、「向上心」を持って頑張ればそれは達成できるだろうけれど、増えたら増えたで出ていくものも増え、次は「やっぱりもう100万欲しい」などと考えるようになるだろう。
欲にはそうやって、際限なく膨らんでいく性質がある。
何より、「収入をあと100万増やそう」と思っている間は、「自分は目標に達することができていない」というある種の不満を抱えて生きていることになるだろう。
その状態は、私にとってあまり心地よいものではない。
肉体的な苦痛はまた別として、我々が感じるほとんどの苦しみは、来るか来ないか分からない未来を思い煩うところから生まれるように思う。
アリとキリギリスのお話は、現実世界の教訓としては正しいのだろうけれど、心の平安という視点で考えたらアリの生き方の方が理にかなっているのではないか。
人生は瞬間の積み上げ算で作られる。
一瞬、一瞬を「幸せだなぁ」「楽しいなぁ」と思いながらニコニコ笑って暮らしていれば、結果としてその人生は幸せなものになるだろう。
人に押し付けるつもりはないが、私はそんな風に思っている。